ハルカミライ
天高く打ち上げる自己証明の歌、出島の空に昇る!BLAZE UP初出演にして独壇場、天晴のシンガロングが轟いた!

 ライヴスタートの3分前、須藤、関、小松がふらりと登壇。須藤が「3分だけリハやらせてください」と告げるや否や、橋本抜きで全力の「ファイト!!」を投下し、3人の絶叫と爆音だけが鳴り響くリハ(まがいの本番)が始まった。そうしてショートチューンをガシガシ鳴らしてちょうど3分、逆光射すステージに橋本がやってくると、「サンキュー、BLAZE UP!」の怒鳴り一発、「君にしか」と「カントリーロード」を連打して本番の本番がスタートした。ハルカミライのシグネチャーと言っていい天を貫くシンガロングと共に橋本は早速ピットに突入し、ぐっちゃぐちゃになりながら美しい歌を響かせる。今日も当然絶好調だぜと告げる、巨大な「イェェェェェェイ!」である。

「初めましてなんで、自己紹介から。赤い髪が俺だ! ギターは髪の毛もじゃもじゃ! ベースはコートを着てる! ドラムは金髪の坊主! 自己紹介はこんなもんで十分だよな——ああ、ひとつ忘れてた! BLAZE UPで体力を使い果たしに来た、お前らだ!」

 初めましての自己紹介にしては雑だが、ハルカミライの歌が誰のためのものなのかを説明するには十分過ぎる言葉である。いつ見ても、どこで見ても、ハルカミライはステージの上を転がって走って暴れ回る。あまりに衝動に従順で、無垢な少年の鼻歌みたいに心のままで、人間の皮を被った動物としての本能に従う。それこそが、この歌の純真さと美しさの正体なのだと思う。そうやって俺らは気持ちよく歌って心のままに命を解き放つから、あなたもあなたの歌を歌えばいい。そんなサインとしてハルカミライはシンガロングをどっかーんと打ち上げて、北極星みたいにキラキラしたメロディを輝かせるのだ。橋本は「幼稚園で歌う歌くらい、簡単だと思ってます」という言葉で自身の歌を語ったが、これも、心のままに歌えばいいんだ、それくらいシンプルでいいんだというメッセージなのだろう。主役は俺であり、お前でもある。だから胸を張って声を上げよう。そういう歌なのだ。

「俺は田舎育ちだから、こんな田舎でこんな祭りをやっていることにワクワクするわ。とにかく気持ちよく歌って帰ろうな。……初めてだけど、なんとなく、ただいま。そんな感じがしてるわ。すっげえ温けえな」

 そんな言葉を聞いて初めて「ハルカミライ、BLAZE UP初出演」に気づくくらい、歌が衝動になって衝動がまた歌になっていく唯我独尊のライヴである。ステージに向かって叫ぶ客を見つけて、まだまだ元気じゃねえかと語りかけるや否や本日2発目の「ファイト!!」をお見舞いするなど、一切の定型がないというハルカミライ・マナーでガシガシ進む。しかし好き放題にやればいいという言い訳は一切なく、ぎゅっと撚られたアンサンブルの安定感があった上での猛進、突進、爆発であることが素晴らしい。ショートチューン「Touch to be a Hugh」も、温かなメロディを歌い上げる「世界を終わらせて」も、そして、大きな声で歌うのは拭えない寂しさを抱えているからだというハルカミライの根本を表した「アストロビスタ」も、体ごと命を打ち上げてやろうという執念一発の輝きを放っている。衝動一発なのに雄大な包容力を感じさせる、これぞハルカミライというライヴだった。橋本による「なんでもかんでも歌いまくる連中でやってるのがハルカミライです」というこれまた簡単な自己紹介は、「誰でも彼でも包み込める歌です」という意味になって刺さってきた。

<セットリスト>
01. 君にしか
02. カントリーロード
03. ファイト!!
04. 俺達が呼んでいる
05. フルアイビール
06. ファイト!!
07. 春のテーマ
08. PEAK’D YELLOW
09. アストロビスタ
10. Tough to be a Hugh
11. 世界を終わらせて
12. エース
13. To Bring BACK MEMORIES
14. フルアイビール

文:矢島大地
写真:岩渕直人