もはや顔役と言ってもいいぐらい、このBLAZE UP NAGASAKIに欠かせないバンドであり、全米ツアーを経て現在は新作『PLAYDEAD』のリリースツアー中でもあるSiMは、のっけから「SiMが帰ってきたぜ! 去年は大人しかったからな」とMAH(Vo)がアジテートし、いきなりの大合唱を巻き起こした「Blah Blah Blah」からその力を見せつけていく。押し潰すのではなく観る者をグワッと持ち上げるヘヴィさ、散りばめられたポップセンスで会場を他にない色で染め上げていくのだ。
伝家の宝刀「TxHxC」が繰り出されれば、一瞬で生まれるサークルピット。床を削り取りそうな勢いで観客は走りまくり、この日に限ったことではないが、SiMがライヴをするとその場所の地形が変わってしまうのではないかと思ってしまうほど。SHOW-HATE (G)、SIN (Ba)、GODRi ( Dr)による鉄壁のサウンドも凄みがあり、その中で体を揺らし、ステップを踏み、時にフロアへ手を差し伸べながら歌い上げるMAHの存在感も流石としか言いようがない。
そして、『PLAYDEAD』をチェックしてないと煽り気味に答えた観客すらもとんでもない盛り上がりを見せたのがその『PLAYDEAD』からピックアップした「KiSS OF DEATH」だった。高性能なヘヴィロックとレゲエのエッセンスを融合させ、国境を超えて熱烈な支持を集めているのも当然だと感じざるを得ないサウンド感。万華鏡のように移り変わる多彩な展開も相まって、物理的に揺れる会場。曲終わりにMAHが思わずサムズアップするほどの狂騒が生まれていた。
とは言え、これじゃ物足りないと感じたのか、「ただただ好きな踊りをすればいい」とMAHが投げかけ、同じく『PLAYDEAD』から「DO THE DOANCE」をドロップ。本能に訴えかける凶悪なダンスナンバーによって、観客の密集度は見る見るうちに高まり、全員でカウントダウンをしてからはさらにおかしくなるフロア。家で聴いているだけじゃ生まれない熱がそこにはあった。
ここで、10-FEETが紅白歌合戦に出場が決まったことを受け、「なぜ、アレが出れてコレが出れないのか、わからないぜ」とMAHらしい言葉から放ったのは、新時代のアンセムと言い切りたい「The Rumbling」。妖しさや激しさだけじゃなく、厳かさも持ち合わせており、スタジアム級のスケール感を誇る曲だ。待ちに待っていた観客も多かったのであろう、MAHの魔性的な歌声と共に想いを吐き出していく。
高まりに高まったムードの中、MAHが言いたいことは特にないけど、と話しつつ、「続いていくのであれば、来年も出たいな、っていうぐらいです」、「SHANKがめっちゃ好き。でも、カッコいいのは100倍、SiMだけどね。それをわからせにきました」と彼らしい言い回しで気持ちを伝え、ライヴはクライマックスへ。キレッキレに切り込み、ドライブ感満載な「Amy」、盛大なウォール・オブ・デスも起こった「f.a.i.t.h」でかき乱し、改めて「『PLAYDEAD』を聴いてないって言ってたヤツら、死ねー!」と宣言してから「KiLLiNG ME」で締めくくり。先ほどの言い回しもそうだが、曲の終盤に「この中でこっからギター弾けるヤツ、いる?」と問いかけて、立候補した観客がいたにも関わらず弾かせなかったり、このシリアスさだけじゃなく、奥行きのある遊び心も忘れない。ワールドワイドになろうとも、やっぱりSiMはSiMだった。
<セットリスト>
01. Blah Blah Blah
02. TxHxC
03. KiSS OF DEATH
04. DO THE DANCE
05. The Rumbling
06. Amy
07. f.a.i.t.h
08. KiLLiNG ME
文:ヤコウリュウジ
写真:岩渕直人