以前SHANKをインタヴューした際、SHANKの将平はBLAZE UPについてこう説明してくれた。「友達がやってるイベントなら絶対に楽しいだろうなっていう。結局、全部そこですよ。イベントの意味やメッセージ、精神性も生まれてくるものなんだろうけど、それは後からついてくるものであって。関係値や信頼がなくちゃ成り立たないものだろうし、友達だからBLAZE UPに誘うってだけ。バンドの繋がりってそういうものだと思うんですよ」。極めてシンプルな行動原理であり、SHANKの人柄を真っ直ぐに映している話である。そしてHEY-SMITHは、今年出演している面々のでも特に、SHANKにとっての「戦友」と呼べるバンドだろう。HEY-SMITHとSHANKは、音こそ違えど闘争の近い精神性で道を耕してきた2バンドだからだ。メロディックパンクを背骨にしながらもメロディックパンクのセオリーを壊すリズム、コードを用いてきたSHANK。メタル、スカ、ダブをメロディックパンクに打ち込んだミクスチャーを、デカいメロディで聴かせるHEY-SMITH。今でこそ各々が存在感を巨大なものにしているが、「当初は俺らの居場所がなかった」と猪狩が以前話してくれたこともある。ジャンルを足場にするのではなく、「俺の音楽」だけを貫く。だからこそ道のない場所に道を作るしかなかった。そんな奮闘の歴史が両者を繋ぐ絆であり、HEY-SMITHが今日のステージで見せたライヴの背景にあるものなのだと思う。ステージで猪狩が発した「お前ら、やりたいことやってるかー!?」という問いかけは、まさに「やりたいこと」を貫くために闘ってきたバンドだからこその言葉なのだ。自由でいろよ。信じ続けろよ。自由でいるために闘えよ。そういったメッセージが常にHEY-SMITHの音楽の真ん中にはあって、それは今日も終始貫かれていた。前置きが長くなったが、HEY-SMITH、強烈なライヴだった。
視界がいきなり西海岸の景色になるホーンのリフ、高速スカ、そしてモッシュパートへ矢継ぎ早に接続する“Living In My Skin”でスタートしたライヴは、2曲目の“Say My Name”で早くもトップスピードに乗り、“Into The Soul”では「踊れ!」の号令一発でモッシュピットはスカダンス天国に変貌。“Endless Sorrow”も、細やかなリズムチェンジとザクザクのギターがBPM以上のスピード感を生む。猪狩は曲ごとに「まだまだ行くぞ!」「行けるよな長崎!」「踊れ!」と人々を焚きつけ、さらにHEY-SMITH全部盛りと言ってもいい“Be The One”で完全にピットのタガも外れたようだった。サークルピット、クラウドサーフはもちろん、名前のない踊りを繰り出す人、空中に正拳突きを繰り返す人……その全部がピースな空気の中で爆発している。あらゆる音楽的な要素を丸ごと包み込んでしまうようなホーンのフレーズ、ザクザク刻まれるギターの上を悠々と泳いでいくような大きなメロディもHEY-SMITHの強い個性であり、それらが生み出すポジティヴな空気感がグングン伝搬していく様が美しかった。やりたいことを好きなようにやる。ここに集った人数分の自由がバラバラなままひとつの場所に存在する。自由と多様を叶えるライヴ、これぞHEY-SMITHである。
「今年いっぱいでかなす(Tb)が活動休止して、来年からサポートメンバーを迎えてライヴをしていくんやけど、BLAZE UPがなかったら、この6人の姿を長崎に見せにこられなかった。だから誘ってくれて感謝してます。SHANKは去年、ドラムの雄季が脱退して。オリジナルメンバーが抜ける苦しさは俺らがよくわかってるからこそ『SHANK大丈夫か?』って思ったんやけど、今年のSHANKを見てたら、間違いないな! メンバーの脱退から1年であんなにとんでもないツアーを回って、BLAZE UPをこうして開催して。俺達も来年からメンバーが活動休止してまた大変な状況になるけど、SHANKの姿からは勇気をもらいました。俺らもSHANKも、続けていくと決めての今やからさ。ずっと俺達のことを見といてくれ!」
SHANKへ宛てた感謝とエールの後に披露されたのは、“You Are The Best”だった。猪狩の歌には「仲間と」や「友達」といったテーマ性が見えることも多いが、まさに仲間の存在がこれからのHEY-SMITHを走らせ、そのHEY-SMITHの存在によって周囲のバンドも背中を押されるのである。猪狩の「SHANK、HEY-SMITH! We are the best!」という叫びがすべてだろう。「音楽好きな気持ち、SHANK好きな気持ち、爆発させろ!」という言葉に続いて放たれた“Let It Punk”も、「この6人でまた長崎に帰って来るから、その時は、お前もツラ見せにこいよ! その日のために、今日はさよならしよう」という約束の歌として披露された“Goodbye To Say Hello”も、SHANKだけに限らず、歩んで生きて闘い続ける人へのエールとして響いてきた。
<セットリスト>
01. Living In My Skin
02. Say My Name
03. Into The Soul
04. Endless Sorrow
05. Be The One
06. Inside Of Me
07. You Are The Best
08. Truth Inside
09. We Sing Our Song
10. Let It Punk
11. Goodbye To Say Hello
文:矢島大地
写真:岩渕直人