MONGOL800
6年ぶりに長崎で響いた「あーそびーましょー!」3ピースで駆け抜けた、慈愛と笑顔のモンパチ節

BLAZE UP初出演となるMONGOL800だが、初出演がどうとか何回目の出演とか、そういったことを抜きにしてウェルカムな空気が持続するのがBLAZE UPのいいところ。おそらくモンパチにとってもそうだろう。初出演のイベントがどうとか馴染みのフェスがどうとかは関係なく、決まってキヨサクが投げかける「遊びましょ」の通り、誰と向かい合っても全力で遊ぶだけ。何より、どんな場所であってもホームグラウンドにしてしまう人柄と音柄の強さである。カチャーシーを踊りながら陽気に登壇したモンパチを、これまたダンスで出迎える出島メッセの人々。初っ端からピースでピーカンで快活、これぞMONGOL800だ。しかも本日はサポートメンバーのクボティを含む3ピースでの貴重なライヴということもあって、ピットに異様な高揚が充満しているのが伝わってくる。

 おなじみキヨサクの「長崎、遊びましょ!」のご挨拶に続いて放った1曲目は、“あなたに”。イントロが鳴ってからコンマ数秒で大歓声が上がって、全員笑顔のピットが即完成である。キヨサクの太く温かい歌声は、心の隙間を吹き抜けていくような、強く優しい父性で人の心を撫でるような、そんな特長を持っている。アグレッシヴなビートの楽曲でも雄大に聴かせる力、それこそがMONGOL800の大きな魅力のひとつだ。そんなことを改めて実感するオープニングである。そして、曲のラストに歌われる<誰を信じて/歩いてゆこう/手を取ってくれますか?>に続けて「長崎、手を取ってくれますかー?」と呼びかけるキヨサク。“あなたに”はラヴソングのような手触りを感じる楽曲だが、モンパチの数々の歌に宿っている慈愛と笑顔のありかについて説明しているような歌だとも思う。たったひとりでは生きていけないし、たったひとりではどうしても俯いてしまう日々だし、だからこそ誰かと共に笑い合いたくて“DON’T WORRY BE HAPPY”と歌っているのだと。そういう歌だから、今なお普遍的な楽曲として愛され、歌われ続けているのだ。そんなことを思う、出島メッセ全体の笑顔の大合唱である。

 「初めまして、BLAZE UP。長崎に来るのも、かなり久々でございまして。いつぶり?……(ステージ袖のスタッフに訊く)……11年ぶり! 11年って、子供が義務教育を終えるくらいですよ(笑)。じゃあたぶん、モンパチを観たことない人のほうが多いだろうな。久々の今日は、3ピースでございます! 元々のモンパチ、裸のモンパチ、まだまだ遊びましょう!」

 現在のモンパチのライヴは、ホーン隊とダンサーをサポートに迎えていることが大半だ。しかし今日は、骨格をそのまま見せるライヴ。しかもキヨサク曰く、11年ぶりのライヴ。「あの頃のモンパチ」と共に歳を重ねてきた人も、そしてもちろん初めましての人も、一緒に笑顔になれるライヴである。“Love song”、“to be continued”と続け、体温がそのままメロディになったような歌でアリーナを包み込んでいくところもいい。そして際立って素晴らしかったのは、上記した「モンパチが笑顔を求め続ける理由」そのもののような“琉球愛歌”だ。<忘れるな琉球の心/武力使わず 自然を愛する><貧しい国見殺し/無力な自分 くずれる今>--この楽曲が発表された23年前よりも、さらにリアリティをもって響くのが2024年の世界である。沖縄というオリジンを持つからこそ歌い続けてきた安寧への願いはそのまま、モンパチが笑顔で幸福を求め続ける理由そのもの。殴られても殴り返さず、己の幸せを抱き締め続けることが何よりの闘争なのだと。そんな「笑顔でいる強さ」は、年々、心に深く突き刺さる。

 「……よくよく聞いたら、長崎に来るのは6年ぶりだったそうです。11年なんて、盛りに盛っちゃいましたね(笑)。11年ぶり、もとい、6年ぶりの長崎のステージ、ありがとうございます!」という、観客全員がずっこけてしまうオチもあり、それもまた笑顔を生み、もうとにかく今この一瞬が愛しくてたまらないと言いたくなるライヴである。「久しぶりの長崎です」と話すバンドと、「久しぶりに観られて嬉しかったです」と伝えたい観客。そのハブとして在るBLAZE UPの大きな意義もまた感じられた場面であり、何年ぶりだろうと再会するために生きていくのだと、そういう約束の場所としてBLAZE UPが続いていくことを改めて願う瞬間だった。ラストに演奏された“少年時代”(井上陽水のカヴァー)は、今日この場で感じた歓びと笑顔と幸福を永遠にしよう、それを抱き締めて生きていこうと言わんばかりの1曲だった。

<セットリスト>
01. あなたに
02. DON’T WORRY BE HAPPY
03. Love Song
04. to be continued
05. 琉球愛歌
06. 小さな恋のうた
07. 少年時代

文:矢島大地
写真:岩渕直人