The BONEZ
ロックのロマンを鳴らし、人と人を繋ぐ巨大な歌 The BONEZのシンガロングは、人と共に生きる歓びを伝えている

サウンドチェックの時点から4人がステージ上に揃い、ビートに乗ってJESSEがいきなりラップを披露。本番までまだ10分弱あるものの、そんなのお構いなしと言った感じで客席を煽りまくる。ガンガン猛進するようなJESSEの姿に着火された人々は早くもステージ前に詰めかけ、それを見たJESSEの「じゃ、サウンドチェックやりますか!」のひと声から“We are The BONEZ”を披露し、早くも本気モード。そのまま板つきで「本番の本番」に突入し、「怪我すんなよ! セキュリティを信頼してここまで来い!」という言葉が号砲になって、1曲目の“It’s time to let go”で爆走ライヴがスタートした。「ガンガン行くからついてこい!」と声を上げるJESSEは己の野性を全開放するようなパフォーマンスを見せているが、しかしThe BONEZのライヴの素晴らしさは、フィジカルな高揚をぶつけ合うこと以上に、その歌ひとつでユナイトできる点にある。まさに“You and I”という楽曲の通りだが、人に肩を借り、人に肩を貸し、支え合うことで未来が開けていくという気持ちがその大きなメロディに映っているのだ。

 途中のMCセクションではZAXが「SHANK」を「しゃ、しゃ、しゃ」と言い淀むなど噛み噛みだったわけだが、JESSEはその様子に爆笑しつつも「トークの上手さじゃなくて、バンドとして心を掴みにいくからな! かかってこい!」と呼びかけた。その瞬間、人々は一気に拳を握り、次なる歌に向かってそれを突き出して応えるのだ。そしてその歌を受け止めた4人はまた歌を巨大化させ、2ビートでのモッシュとツーステップが矢継ぎ早に接続していく“Rusted Car”では、決して止まらぬバンドの意志を真っ向から掲げ、「今はいろんなバンドがいろんな形でフェスやっていて。コロナ禍になっても諦めずに俺らを応援してくれて、ありがとうございました! あれと同じことが何十回来ても大丈夫だと思わせてくれたのは、お前らだからな!」という言葉から雪崩れ込んだ“New Original”ではライヴハウスの文化を新たに築いていく決意をピースフルに放つ。The BONEZの楽曲は超絶ラウドだが、しかしその音の一つひとつは体温に近く、温かい。その温かさはきっと、ステージと客席の間にある信頼感がそのまま映ったものだ。ひとりでは生きられないから共に歌いたいんだと願うような、そんな人間味がどの曲からも感じられる。それがThe BONEZの素晴らしさであり、彼らの歌が人間の心奥に触れる理由なのだと思う。「まだライヴができる状態じゃねえ能登半島に届くくらい、歌ってくれ!」と語りかけて始まった“Thread & Needle”の巨大なシンガロングも、“SUNTOWN”で見られるフロア全員でのジャンプも、すべてが「独りじゃない」というメッセージに裏づけられたもののように感じられる。人と人、俺とお前、あいつとあなた。どの曲、どの瞬間にも人の温かさがある。そして、嬉しさや感動といった感情を人と分け合うことにこそ意味を見出すような眼差しがある。

 そういったThe BONEZのアティテュードを何よりも表していたのが、Dragon AshのKjを呼び込んで披露された“Straight Up feat. Kj”だろう。The BONEZとDragon Ashの共同ツアーに際して作られた楽曲だが、そこには“Grateful Days”や“Life goes on”の一節が組み込まれていて、さらには“Pictures”(Pay money To my Pain)のコーラスも引用されている。JESSEがKjをコールする際の言葉は、こんなものだった。

「もう死にてえとか、全部放り投げてえとか。そんなふうに明日を生き抜いたとしても、また明後日がやってくるから。人にどう思われるかじゃなくて、自分がやりてえことじゃねえと続かねえってこと。今日出てるバンドも、このBLAZE UPも、その意志で繋がってきてますんで。その辺、よくわかってもらってもよろしいですか? ……ひとりじゃ何もできねえ、だから力を借りてみる! Kj! 昔は敵、今となっちゃ相棒!」

 この言葉は、BLAZE UPというイベント、ロックバンドに限ったことではなく、生き続ける人すべてに当てはまるロマンを表しているものだと思った。生き続けることによって人と人は出会い、別れ、また出会うという人生のロマン。それを音楽的にも表し、繋げてみせた“Straight Up”の無敵感たるや。今こそさらに蒼く獰猛になっているように見えたKjとJESSEの絶唱は、「長崎にロックの火を灯し続ける」という意志の基に興されたBLAZE UPへの、何よりのエールだっただろう。続けていく。繋いでいく。その先に思いもよらぬドラマが待っている。言葉にすれば凡庸だが、そんな最高の瞬間をまさに体現するライヴだった。

<セットリスト>
01. It’s time to let go
02. You and I
03. Rusted Car
04. New Original
05. Thread&Needle
06. Straight Up feat. Kj
07. SUNTOWN

文:矢島大地
写真:岩渕直人