coldrain
凶悪であるほど爽快、『ロックの鳴る場所を守るのはあなた達だ』と伝える超ヘヴィなファンファーレ

 音の印象だけで言えばお昼が似合わない、徹底的にヘヴィなバンドである。だが、「(この1年で)雰囲気変わったね、前に進めたね。取っ払えない規制はあるけど、一番大事なのは、精一杯音楽を楽しみながらこの場所を守ること。音楽シーンを守ってるあなた達の前なんだから、ここで俺らが一番いいライヴをするよ」(Masato)
というメッセージをきっぱりと放ちながら存分に衝動を解放させるバンドだからこそ、このソリッドなロックフェスの意味を伝えるためにSHANKはオープナーを背負わせ、coldrainも背負ったのだと思う。

 ライヴは、coldrainの歴史で数々のハイライトを描いてきた「FINAL DESTINATION」からスタート。声は出せないものの、ピットの人々は体全体で歓喜を示す。続く「HELP ME HELP YOU」は、跳ねるビートに四つを打つキック、さらにはリズムとして機能する小気味いいシャウトを交えた楽曲。いわばcoldrainの技巧が凝縮されたようなナンバーで、そんな曲がくれば、ピットはさらに体一発で衝動を表して応える。即着火、即ピーク、理想的なオープニングである。

 さらに「THE REVELATION」ではモッシュパートとブレイクダウン、アンセミックなメロディのコントラストで煽る煽る。あー、この感じ。Masatoの言う通り、ガイドラインのもとにステージも観客も長い間緊張感を持ってきたけれど、そして今もすべての規制がなくなったわけではないけれど、それでも、おっかなびっくりな空気はなくなった。心のままに音楽を楽しんでいいんだ。そんなピュアな衝動をバンドと観客とで共有できているからこその、伝家の宝刀だけを連打するライヴである。

 「MAYDAY」では、Masatoが何度も「ジャンプ!」「跳べ!」と叫ぶ。coldrainが執拗なほどにヘヴィでダークなサウンドを鳴らすのは、腹に抱えたネガティヴィティやダークさを大多数の共通言語にして発散したいからではない。ネガや鬱屈を突き抜けたいし、その向こう側に手を伸ばしたいからcoldrainは叫び、重たいものを抱えながら跳ぶのだと思う。ブルータルなメタルコア「RABBIT HOLE」では強烈に落とし、それを自分らで振り切るようにして「F.T.T.T」では2ビートの爆走、爆走。凶悪なほど爽快、これぞcoldrain!な瞬間の連続だ。

「BLAZE UPはパンクなフェスだと思ってるし、SHANKのことも生粋のパンクバンドだと思ってる。だけどよく見ると、意外と幅広いラインナップだよね。だから俺らもパンクな曲をーーいや、メタルかもしれないな。ラウドかもしれない。まあ、とにかく速い曲やります」(Masato)

Masatoはそう言って「F.T.T.T」をドロップしたが、こういうファストな楽曲こそが、coldrainや、SHANKをはじめとしたその盟友達が日本のロックシーンでどう闘ってきたのかの歴史自体を表している。海外のポストハードコアにオンタイムで共鳴し、だからこそ日本のシーンにおいてはオルタナティヴな存在として登場したcoldrain。日本のラウドミュージックと言えばメロディックパンクだという発想が強かった当時のシーンで、ヘヴィなビートに限らず2ビートまで消化することで存在感を示していこうとしたのがcoldrainである。coldrainとSHANKが出会い、それぞれ軸足を置いている場所に縛られたくないという気持ちで共鳴し合ったのも頷けるし、共闘というよりはそれぞれの「はみ出し方」がクロスしたことで、今日までお互いの道が続いてきたのだ。言うまでもなく、こういった共鳴関係は、この2日間に集ったバンド達すべてに通じていることだ。

 ラストに鳴らされたのは「PARADISE」。コロナ禍の最中、ドラムンベースのビートを取り入れて放たれた楽曲は、それまでにあった自由が縛られたとしても心は解放できるのだという意志をビートに宿して完成したものだ。その「躍る」ためのサウンド自体がcoldrainの進化そのものであり、鬱屈した心の向こうへと跳ぼうとする彼らの真価でもある。そんな芯と真しか鳴らない、オープニングであり全編クライマックスのライヴだった。

<セットリスト>
01. FINAL DESTINATION
02. HELP ME HELP YOU
03. THE REVELATION
04. MAYDAY
05. RABBIT HOLE
06. F.T.T.T
07. PARADISE(Kill The Silence)

文:矢島大地
写真:岩渕直人