MOROHA
身じろぎすら許さない静寂が最大の賛辞。愛とは何かを自分に問い続ける痛切なライヴ

 リハーサルからひたすら本気だ。10分強のサウンドチェックでまず鳴らしたのは新曲「チャンプロード」である。<最初で最後 最強の今日>だとプライドを張り、<自分のペースで楽しまないで/俺らの本気に付き合ってくれ>と怒鳴る歌。「楽しもう」の空気をピシャリと断ち切って、MOROHAのライヴに対するスタンスーーこれから始まるのは俺とお前だけの対峙、逃げ場のない勝負だということをBLAZE UPに突きつけるのである。全部本気なんて当たり前だろとアフロは言うだろうが、それでも、今は今しかないのだとひたすら自分を追い込んでいくMOROHAの姿勢が鋭利な風になって、BLAZE UPにピンとした緊張感が生まれる。

 もはやリハと本番の境界線もないのだが、そのまま移行した本番一発目で、アフロは「アコギとラップで一番デカい音鳴らしたぁぁぁぁい!」と雄叫びを上げる。1曲目の「革命」はまさに、これほどまでの殺気がどこから湧いているのかを説明し切るような楽曲であり、すなわちMOROHAの看板だ。冒頭、定型の口上を「乾杯! バヤ(My Hair is Bad)といった言葉に替えるユーモアを見せるが、変わらない自分、革命など起きやしない日常に対する諦めを一つひとつ殺していく歌はやはり鬼気迫っている。MOROHAの殺気とは、何より自分自身に向いている刃なのだ。逃げるな、怠けるな、諦めるな。そうしてもがき叫ぶ様を人に見せることで、より一層退路をなくして自分の嘘と誤魔化しを殺していく「自分対自分」の闘争だ。

 「カッコいいバンドがたくさん出てるのは知ってる。けど、俺が言いたいことはただひとつーー」という言葉からシームレスに雪崩れ込んだ「俺のがヤバイ」にしろ、一転「最前列の女の子が怯えているのでラヴソングをやります」と言ってからUK(Gt)の穏やかなフレーズに載せた「花向」にしろ、MOROHAの楽曲に通底しているのは愛されることへの飢えだと改めて思う。俺のがヤバイ、俺は勝ちたい、俺は諦めないと叫び続けるのは、自分の「愛されたい」という欲求に対しても嘘をつきたくないからなのだ。愛されたいから勝ちたいし、勝ちとはなんだと言われても徹底して上へ上へと噛みつき、そうしていつか自分も人を素直に愛せる人になりたいと歌う。それこそ「勝ち負けじゃないと思える所まで俺は勝ちにこだわるよ」も披露されたが、どんなに愛されたい・勝ちたいと叫んでも愛ほど手に負えないものはなくて、行き場のない悔しさにまた引き裂かれるーーそうしてもがき続けるMOROHAの歌、ライヴだからこそ、音数の少なさに反して徹頭徹尾ラウドだし痛烈な響きを持って飛んでくる。

「長崎にはもう来られないと思ってた。というか、来ないと自分で決めつけてた。表面上は『またコロナが落ち着いたら来ます』と言ってたんだけど、そうやって自分を誤魔化した言葉がさらに薄まっていって、人は忘れていく。そうわかった上で、もう長崎に行くのは無理かもなって思いながら俺は言ってたんだ。だけど、SHANKに襟首を掴まれた。長崎忘れてないか?って。まんまと思い出してしまった。Studio Do!に帰りたくなってしまった。来年、必ずツアーで来ようと思います。愛っていうのは言葉でも気持ちでもなく、行動のことだと思う。SHANKの愛に応えたいと思ってます」(アフロ)

 そうしてSHNAKへの感謝を述べたアフロの、やっぱり自ら行くしかないのだと改めて腹を括った様が印象的だった。「SHANKと出会った日に演奏した曲をやります」と言って最後に演奏された「三文銭」では、「音楽は人生を変える。MOROHAの音楽が人生を変える。だけど、MOROHAの音楽で変えられたのは俺とUKの人生だけだ。お前はどうする? お前は誰だ?」という問いかけだけを残して、ステージを降りた。いつだって最初で最後、フェスだろうとどこだろうとそれは変わらない、そう思って生きるからこそ俺もお前も続いていくんだと伝えるアクトだった。素晴らしかった。

<セットリスト>
01. 革命
02. 俺のがヤバイ
03. 花向
04. 勝ち負けじゃないと思える所まで俺は勝ちにこだわるよ
05. 三文銭

文:矢島大地
写真:岩渕直人